グレゴリオ麺道　〜Red Stoneと麺類〜

昔のお話を思い出しながら書き起こしました。
　口調も変わっているでしょうし、今回はだいぶんに加筆させていただきました。

　それと今年語らせていただいた「十六人谷」はここからのものをアレンジした
ものになりますが本家のほうが圧倒的に怖い

　これは怖い話っていうのでもないんで奇妙な話ってやつなんですけど

ね。私、昔はちょくちょく金縛りってやつになっていたんですよ。あの

ぐぅーっと押し付けられるような感覚の奴。動けないやつ。

　ある日、休日に部屋で寝ていたときに、また胸をぐぅーと押されたと

きにね、ふと気が付いたんですよ。これ背からやってもらったら、ちょ

うどいいいんじゃないかなって。まあ、私は生来の肩こりで背中をほぐ

してもらういい機会だって思って、何とか金縛りを解かないようにうつ

ぶせになろうとしてみたんですよ。するとね、なんかうまい具合に体が

ひゅるっと回ってうつぶせになれたんです。

　そうするとまぁ想像通りにね、ちょうどよく背中のいいところをぐぅ

ーっと押してくれてるんです。思わず「あー」って声が出たとこで金縛

りが解けちゃいましてね。その時に去っていこうとする気配に手を伸ば

したら何か掴めちゃったんですよ。たぶん、感触的に手じゃないかと思

うんですけど。

「もうちょっと」とお願いしたらなんか困ったように微笑まれたような

気がして手の感触も消えてしまいまして。それから胸をぐぅーっと推さ

れる金縛りは一回も起きない。残念です。気持ちよかったのに。

　しばらくというか何か月かたってから、また金縛りにあいまして、今

度は足をつかまれたような感じのやつ。足のマッサージしてくれたらよ

かったらいいんですが、そんな気はない奴でね。というのも、その時足

元を見たら顔があったんです。長い髪の女なのかな、あれ。まあ、でも

なんか悪意持った奴だとはわかりました。そいつがこちらの顔のほうに

じりじりとよってくるんです。

　いやぁ、怖いというよりむかつきましたね。こいつなにしとんねんて。

そいつが胸元まで来たところで、やり返したんですよ。こうがぶって

噛みついてやったんです。そしたらね、おもしろいことに歯触りという

か食感があったんです。その幽霊さん何されたか一瞬分からなかったみ

たいでえって顔してました。まあ、齧れるって分かったから手でがって

掴んで齧ってやりました。

　その時初めて食ったんですけど、味がないように感じるけどなにかう

まみのようなものがするんですよ。不思議な味です。気が付いたら平ら

げてたのか、逃げられたのか。手の中からなくなっていました。

　それから今まで金縛りにあったことがないんです。残念ですよね。


　まあ、幽霊の味が忘れられないままに過ごしてたんですけどね。３年

前くらいに怪我してしまいまして、入院したんですよ。病院て場所はつ

きものじゃないですか。

　幽霊。

　もちろんね、期待してたんですよ。そうしたらね、夜中にふと目が覚

めると、閉めたカーテン越しに人影が見える。そして、その人影がカー

テンの隙間からこちらを除いてきたときに目があいましてね。血まみれ

の顔と。向うからすればしめしめでしょうが、こちらもしめしめですよ。

　おいしくいただきました。

　けっこうそのいたんですよね、その病院は。おかげでたらふく、うん、

ちがうな。いや、たらふくという表現が違うんです。なにせ幽霊とい

うやつはいくら食べてもおなか一杯にはならないんです。いくらでもい

つまでも食べられる。最高でしょ、おなか一杯にならないごちそうなん

て。

　いろいろ食べたおかげで、いろいろわかってきたことがあるんです

よ。幽霊の味はね、どんな存念があったかで変わるんですよ。悲しみは青

くてヒヤッとしてミントみたいで少し甘いし、怒りは赤くピリピリとし

て辛い、怨みは紫のねっとりして濃厚なんですよ。

　怨みが一番好きなんですが、ちょっと困ったことになりましてね。

　ええ、その、食べ過ぎましてね。まわりにいないんですよ。幽霊。

　死んだからって皆さん幽霊になるわけでないし、最低１年たたないと

味が薄いんですよ。相当な思いがないと幽霊になりませんし。

　それでね、私は思いついたんですよ。いい方法を。

　それについて面白い話があるんですけど、皆さんみんなに話すより二

人でお酒でも飲みながら話したほうが面白いと思うんですよ。

　どなたか、いません？　ちょっと飲みに行きましょうよ。

　ねぇ、どなたか。ねぇ。

　どなたか。

　どなたかぁあ。


　どなたかぁあああああああああああああ！！！！

ひぎゃあああああ！

じわじわおかしいのに、やっぱりこわい…
覗きにうかがって得しました(*´ヮ`)

>じわじわおかしいのに、やっぱりこわい…

それが狙いのお話です。
これを語ってた時のどなたかの「どっから突っ込めばいいんだろう」というつぶやきでひそかに良しと思っておりました。